言語指導とは

言語指導とは、ことばの発達がゆっくりなお子さんに対して言語聴覚士が行う、『言語聴覚療法』のことです。

言語聴覚士とは、英語でSpeech-Language-Hearing Therapistのことで、略してSTと呼ばれます。
言語聴覚士(以下ST)とは、国家資格を持つ、リハビリテーション専門職の一つです。きこえやことば、口から食べることの問題を抱える方とその保護者に対して各種検査や評価を行い、その結果に基づいて目標を決め、支援と指導を行います。

どんな人が対象になるの?

コミュニケーション全般について、以下のような心配を抱える方とそのご家族が対象です。
・耳のきこえの心配
・口腔器官の構造や動きの問題
・ことばの発達の遅れ
・読み書きが苦手
・発音が不明瞭
・吃音
・コミュニケーションがうまく取れない

子ども

指導を受けるには?

自治体の子育て相談窓口では、STへの相談を受け付けているところもあります。

また、療育機関を教えてくれることもあります。医療機関でも、小児のことばの相談を行うところが少しずつ増えてきています。また、最近は個人で開業するSTも増えてきましたので、お近くを探してみてはいかがでしょうか。
「日本言語聴覚士協会」のHP、または各都道府県の県士会HPから、検索することもできます。

開始の時期

言語指導の時期に、お子さんの年齢や、言語発達の程度による制限はありません。

指導の開始は、言語症状の程度だけで決まるのではなく、保護者のニーズや利用施設の物理的条件なども鑑み、適宜判断されます。病院や療育センターでは、医師が指導の必要性を判断します。

子ども

最近は、言語指導を受けたいという希望者が多く、申し込んでもすぐに開始できない状況にあります。「指導を受けた方が良いのかな?」と迷われたら、まずは相談を申し込んでみてください。

時間と料金

個別の言語指導時間は、1回30分~60分です。

週1回というところから年に数回というところまで様々です。言語症状の程度と回数は比例するわけではありません。施設によって一律に決められている所もありますし、相談しながら決めていく所もあります。
公的機関では、無料もしくは一部の負担金で受けられることがあります。医療機関では医療費で受診できます。一部、自由診療で行っている医療機関もありますので、HPなどから確認してください。個人で開業しているところは、それぞれの場所で料金設定をしています。

乳幼児のことばの指導について

今回は乳幼児期の、ことばの遅れに対する指導について説明していきます。本来は、お子さんのタイプや障害によってやり方や内容は変わってきます。

ひとりひとり状態に合わせたオーダーメイドのプログラムになるのですが、ここでは大まかなながれについて説明しています。

聴力の問題がないか確認する

ことばや発音の発達には、聴力が大きく影響してきます。

「産後の新生児スクリーニングで何もなかったから大丈夫」とも言い切れないことがあります。滲出性中耳炎が原因で聞こえにくくなっていたり、生まれつき特定の高さの音だけが聞こえにくい、ということが幼児期に発見されることがあります。

赤ちゃん

ことばの遅れや発音が不明瞭だったから調べてみたら、実は聴力に問題があった、ということもあります。

ことばの発達段階に合わせた指導

ことばが言えるようになるためには、ことばを理解していなければなりません。そのため、話すための練習以前に、理解できることを増やしていくことが鍵となります。
理解できることばが増えてきても、話し始める時期には個人差があります。それぞれのお子さんの個性や発達のペースを見ながら、達成できそうな目標を決めて、プログラムを組んでいきます。では、ことばの発達の段階ごとに、どんなことをするのか見ていきましょう。

1.ことばの獲得以前

ことばを獲得する前のお子さんには、知能や認知の発達と人との関わりを学ぶために、やりとり遊びや物の操作などを中心に行います。
例えば「くるま」ということばを覚えるには、車がどんなものであるか知らなければなりません。車を投げて倒して遊んでいるうちは、まだ車というものの理解ができていないと考えられます。手にもって走らせて遊ぶようになると、車とは走るものだと認識し始めたことが分かります。


ことばは人とのやりとりの道具です。動作模倣やバイバイのジェスチャー、指さしなどを使って、とばの前のコミュニケーションをしっかり取ることも大切です。

2.単語が出始めたころ

身の回りにあるものがどんな物か理解してくると、物に名前があることを学びます。ことばは、まず名詞から増えていきます

その後に、動詞や性質を表すことば(大小、色など)を獲得していくという順序性があります。

言語療法ではこの順序性に沿って、獲得目標とする語彙を決めて指導を行います。
この時期は、単語と言っても語尾だけしか言えなかったり、全体的に不明瞭で聞き取りにくいことばになっていることも、珍しくありません。

それについて、ひとつずつ区切って、「く・る・ま」と正しい発音で言わせる必要はありません。それよりも、「くるまだね」と正しいことばを言って、聞かせてあげることが大切です。

3.語連鎖へ

名詞以外にもことばが増えてきたら、2語文の指導へと進み、さらに3語文へと進んでいきます。
単語をふたつ以上つなげて話すには、一定のルールがあります。

文法です。

「ジュース飲む」は言いますが、「飲むジュース」とは言いません。

ジュース

文法は、ことばの発達とともに獲得していくものですが、ことばの発達に遅れがあると、この規則性の学習につまずくことがあります。周りで話している人のことばを聞いているだけでは習得が難しいので、指導で改善を目指します。シンボルを使った構文指導などがあります。

4.会話の段階

この頃には簡単な受け答えができ始めるのですが、中にはそれが難しく、答えようとしなかったり、オウム返しになってしまうお子さんがいます。

質問の意味が理解できないのか、
答え方が分からないのか、

など、困難さの背景を探って指導につなげます。
また、質問に答えるだけが会話ではありません。言いたいこと、感じたことなどを説明する力も必要です。どんな内容でどんな順番で話すのか、など絵やカード、文字など視覚的な手がかりを活用して練習します。

どの段階にも言えることですが、ことばを話すには、まずことばを理解することが必要です。そのため、語や文の理解が先行し、表出を促すというプログラムになります。
また、お子さんのタイプによって指導方法や内容も変わってきます。人と双方向のやりとりが得意なお子さんと、目に見えないやりとりより見て学習することが得意なお子さんとでは、ことばの学習の仕方が違います。

得意なところを活かしてことばの学習を促すことが、基本的な考え方になります。
教材としておなじみなものは絵カードですが、ミニチュア、玩具、絵本や写真なども使用します。最近はタブレット端末を使った指導も増えてきました。それぞれの好みや段階に合わせたものを使っていきます。

現代っ子

コミュニケーションについての指導

ことばが遅れているお子さんは、自分からの意思表示が少なかったり、話しかけた時の反応が乏しかったりします。
その場合、まずはやりとりに重点をおいた関わり方を、保護者の方に指導していきます。

コミュニケーションがとりやすい遊びとして、体を使った遊びや手遊び歌などがあります。

それらは、お子さんからの意思表示や動作模倣を引き出しやすくなります。また、日常生活では、ことばだけでなく実物を見せながら話しかけたり、短いことばやジェスチャーを交えて伝えるようにします。
関わり遊びを増やし、表情や目線などのわずかなサインを大人が読み取り、気持ちに寄り添った反応をしていくことで、「子どもと目が合いやすくなった」「やりとりが増えた」という報告をよく耳にします。
子どもに分かりやすい話し方をして、コミュニケーションの成功体験を増やしていくことも、心が安定してことばを吸収しやすくなります。

発音の指導

ことばの発達の遅れがあると、話しはじめてからも全体的に不明瞭になったり、特定の音が言いにくいということがあります。幼児期は、言語発達全般を促しながら改善の様子をみていきます。
会話も充分できるようになって、しりとり遊びや文字の読み書きなど高度の言語能力が身についてきたころには、発音も完成されることが多いです。

それにも関わらず、「がになってしまう」など正しい音が出せない場合には、構音訓練を行います。通常6歳ころから開始しますが、お子さんが気にしていて話すことに自信を失っているようなら、早めに行うこともあります。

本人が訓練に協力的か、ということも訓練の開始時期を見極めるポイントになります。
単語の中にどんな発音が含まれているか意識したり、きちんと聞き分けたりすることが不十分なら、音韻に対する認識のトレーニングから開始します。

そして、舌の使い方、動かし方の練習に入ります。
どの音から開始するか、というのは人それぞれ違っていて、その人にとって簡単にできそうな音から始めます。

指導終了のタイミング

ことばの問題が解決すれば、そこで指導は終了となります。

しかし、実際はすべて解決するということは難しく、『当面の心配が解消された』、『目標が達成された』などが節目となり、その後は間隔をあけて様子をみたり、一旦終了ということになったりします。
施設によっては、年齢で区切っているところもあれば、最初から回数が決められているところもあります。
ことばは本来、生活の中で人と関わりながら獲得し使っていくものです。子どもにとっては、発達段階に合った遊びや人とのやりとりなど生活そのものが、学習の場になります。言語指導の時間は、お子さんの良い所を発見できる機会でもあります。

毎日の生活の中で、ぜひその良い所を発揮していってほしいと思っています。

この記事を書いたひと

言語聴覚士 木村寿代先生

専門は、小児のことばの発達障害全般。
九州の療育センターで12年勤務した後、独立し、首都圏中心に、ことばの相談や巡回指導を行っている。
昨年相模原の自宅で、ことばの相談室【結】を開業。
ことばの問題を中心に、子どもの発達や性格に合わせた関わり方の指導を得意としている。

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