発達障害者を対象とし『プログラミング』と『デザイン』に特化した独自のカリキュラムと就労機会を提供している、日本初の就労移行支援施設GIFTED ACADEMYを運営する、 GIFTED AGENT 代表取締役社長 河崎 純真(じゅん)様にお話をお伺いしました。
身近な課題を 一生のライフワークに
GIFTED AGENT株式会社(以下、GA)は、2年前に作った会社です。
17歳から起業し、最先端のVR(バーチャルリアリティ)のソフト開発など、国内外のIT系の会社を作って6社目になります。
母が発達障害だったということや、自分自身もADHDの診断を受けていることもあり、もともと発達障害に興味がありました。
自分自身も同じ課題を抱えているということから、ライフワークとして取り組みはじめたことがきっかけです。
国内外の様々な事業を手掛けながらビジネスの方向性を考え抜き、ライフワークである発達障害の課題解決への取り組みを一生の仕事にしようと思い、事業化して本格的に取り組むことにしました。
実際に 能力を活かすために
GAでは、『偏りを活かせる社会を創る。』をミッションとしています。
実際に偏りがある人たち(例えば、発達障害を持つ人たち等)の中には、本当は素晴らしい能力があるのに社会の枠組みのせいでうまく本来の力を活かせない人たちが存在します。こういった人たちの能力を活かすことのできる社会を創っていきたいと思っています。
偏りを活かす社会を創るために教育(※ 職業訓練)の場であるGIFTED ACADEMYと、実際に能力を活かす開発の場を提供しています
※ 職業訓練・・・プログラミグ訓練など
教育の場では、エンジニアやデザイナーとして活躍できる知識・経験と、また、第一線の開発現場とのつながりに力を入れています。
最先端技術の学び
GIFTED ACADEMYでは、VR(バーチャルリアリティ)やデータサイエンス等、最先端の技術を教えています。
VRやデータサイエンスは発達障害の特性に合っている点と、需要(ニーズ)が合っているところがポイントです。
実際に、GIFTED ACADEMYに参加して半年でVRの会社に就職が決まった人がいますし、他にも、VR系の会社に2名がインターンとして決まっています。また、IBMさんとは、公式なパートナーとして連携しています。
具体的な教育実績の一つとしては、VRのソフトウエア開発で、indoorbackpack(インドアバックパック)という作品を作りました。(サイト→http://bapa.ac/)
これは電通や博報堂が協賛して開催されるBAPAというイベントで優勝し、SENSORSという日本テレビの番組でも放送されました。
※ 引きこもりの青年を外の世界に導く、VR技術と家族愛のハイブリットが生み出す全く新しい出会いの物語(サイトより→http://indoorbackpack.portfoliobox.net/)
発達障害や偏りを持った人たちとのつながりが大切
既存の会社や、社会全体を変えるというアプローチではなく、「偏りを活かせる」場をどんどん作っていこうというアプローチを取っています。
GAで、社会で学ぶ場、働く場、生活する場というものを全部作っていきたいなと。
今後は エンターテイメントや介護系の事業、金融系も手掛けていきます。
※ 教育・職業訓練の場であるGIFTED ACADEMYは、昨年の6月から始動しています。
ただ勉強するのではなく、より実践的な学びということで、実際に企業から受託しているプロジェクトにも利用者は参加しています。
利用者さんには、女性も多いです。
自分の能力を活かしたいと思っているあなたへ
発達障害等の偏りを持ち、『 自分のココを活かしたい! 』
と、思っている方に来て欲しいなと思います。
「自分はまだまだこんなもんじゃないぞ!もっと自分を生かせるはずだ!」という強い気持ちを持った人に来て欲しいと思っています。
GIFTED ACADEMYの拠点数を増やすことは考えておらず、渋谷(現在の拠点)メインでやっていきます。
拠点として渋谷を選んだ理由は、IT関連ベンチャーが多く活動していることと、新しい挑戦を受け入れてくれる雰囲気があることです。
加えて、渋谷には多様性を大切にする空気があり、発達障害という特性を差別的意識なく受け入れてくれるだろうと考えました。
今後は、遠隔での教育・職業訓練の機会を増やし、渋谷区(自治体)と連携して地域の多様性を盛り上げていく活動も行っていきます。
企業との連携をもっと広げて、働きやすい社会を一緒に作っていきたいと思っています。
河崎さんにとって、よかったと思える社会経験はありますか?
起業したり、家出したり、という経験です。
僕は、学校にはあまり行っていません。
家でゲームもしましたが、田舎(大分県の農村部)だったので野山を駆けずり回っていました。
今は時効だと思いますが、人の家の竹林をのこぎりで伐採し、刈り取り、テントを張ったこともありました。
当時 母は『 何やってるの? 』と言うくらいです。
学校へ行きなさい!とは言わなかった。
母は、花を栽培して繁華街で売り歩いていました。
僕も母について行って、一緒に売っていました。
居酒屋とか、バーとか。
『 おねえちゃん、これ買って 』って(笑)
自分の知識や経験は、学校では培われていないですね。
早めに、社会の中で生きたほうがいいと思っています。
学校で学んだことは、社会経験ではないから。
いろいろ学べる時期に社会経験をさせずに学校の勉強だけ受けさせるのは、よくないなと思います。
学びたいことは人によって違う。
基礎学力は小中で十分ではないでしょうか。
学問を収めたい、研究者になりたい、というなら別かもしれませんが、多様な社会経験をさせたほうが、社会では生きやすいと思います。
僕は15歳で家を出て、8年間実家に帰っていません。
嫌なことがあって家出をした訳ではなく、早く社会に出たかったのです。
高校も意味ないと思ったし、ずっと大分(実家)にいても意味ないなと思った。
(高校へは行かずに、大検をうけて慶応義塾大学に入学)
家を出たのは世界を知ろうと思ったのがきっかけです。
家出をして一人で生きるという経験も、社会勉強だと思っていました。
最悪、警察とかに駆け込めばいいかな?と。
死ぬことはないなと。
あても特にはなかったですが、「生きていくぞ!」という自分の気合いですね。
当時から老けてみられていたので、年齢を偽って働いたりもしましたよ。
ママたちへのメッセージ
一つ言えることは、発達障害はGIFTEDだと思っています。
必ず、その子が活躍できる能力があると思うから。
だから、マイナスに思ったり苦手なことを埋めようとしたりするより、得意なことを活かす。
周りが支えていくと、本人自身が活躍できる場を作っていくことができる。
だから、本人達と一緒に作っていけるとうれしいな。
GAはそこを目指しています。
ぼくは、本人がやりたいことを見つけた時が、偏りを活かせる瞬間かなと。
一人より、場やみんなと一緒になって偏りを活かすことを実現していきたい、と伝えたいです。
インタビューアー
<おうち療育アドバイザー浜田悦子>
『元発達支援センター指導員』で『自閉症スペクトラムの息子の母』という2つの経験を生かし、同じ悩みを持つお母様方に、家庭でできる療育アドバイスや、カウンセリングを行っている。
日常生活や社会性の悩みへの対処法を、具体的に指導。
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