髪を切ることが苦手な子どもでも、楽しく美容室に通えるようになる!親子の笑顔を増やす、そらいろプロジェクト京都

発達凸凹情報サイト 管理人の伊藤真穂です。

我が子(小2 支援学級)が小学校の入学式直前に、『きちんとしていこう!』と張り切って美容室に連れていきました。

ところが、

半分まで切った状態で美容師さん、

『危ないからこれ以上切れません』

とボイコット。

他の子がピシッとしとした髪型のなか、うちの子だけ左右アンバランスの妙な髪型で、入学式を迎えました。

未だに、『切れたら、奇跡』状態です。

髪を切る男の子

同じ様に、

美容院が苦手で途中で脱走してしまう、
うちで切っても嫌がって逃げ回る・・

 

そんな、発達に凸凹のある子どもたちのヘアカット問題。

 

『他の子どもは落ち着いて座っているのに、なんでうちの子だけできないんだろう・・・』

そんな悩みを抱えるママも多いですよね。

 

今回インタビューさせていただいた、京都に拠点を持つNPO法人そらいろプロジェクト京都様は、そんな親子の強い味方です!

代表の赤松隆滋さんに、そらいろプロジェクトの活動や、ヘアカットに関するママのお悩み解決方法についてお伺いしました。

 

発達凸凹アカデミー

そらいろプロジェクトとは?

 

美容師が中心となって、高齢者や障がいのある子ども達、みんなの笑顔のために活動している団体です。

「髪を切る」そんな当たり前に感じられる行為が、中々思うようにできない人たちが世の中にはたくさんおられます。

理容室や美容室に行きにくい人たち、またそのような人たちを受け入れにくい今の社会、業界を変えていくために、美容の面からバリアフリー社会を作っていきたい。

その実現に向けて、スマイルカット等の直接支援,又は講演やヒーローショーを通じた啓発活動を行っています。

主な活動

スマイルカット(発達障がいを持つ子のためのヘアカット)

理・美容院で椅子に座ってカットができない、自閉症や多動症などの障がいをもつ子どもへのカット。

自宅での保護者のカットから理・美容室でのカットに変わることを目的に、障がい特性にあわせてカットの個別プログラムを段階をふんで、行っていく。

障がい児の中には理・美容院で椅子に座ってカットができない子どもがたくさんいます。

例えば、

  • ドライヤーやバリカンの音に反応してパニックをおこす
  • じっと座っていることが苦手
  • 知らないお店に入ることに恐怖を感じる

無知からくる誤った偏見や周りからの目に遠慮して、保護者の方が、子どもを気軽に理美容院へ連れていけない・・・という現実があります。

そんな子ども達が、

ゆくゆく理美容院で1人で椅子に座ってカット出来るように、
1人1人の歩幅に合わせゆっくりと練習していく。

年々依頼は増加していて、

店舗内の他に現在、総合支援学校、幼児園、児童館、自宅などの場所でスマイルカットを実施しています。

現在まで、通算2,500名を超える子どもたちのカットに、たずさわってきました。

ママにもできる!チャイルドカット講座(地域貢献 子育て支援講座)

 

地域貢献の一環として、地域の児童館・保育園・子育てサークルなどで子どもさんの前髪カット講座を実施。

カットの仕方を教えるだけではなく、スマイルカットを通じて学んだ、子どもの心理等の話を織り交ぜながら、親子のコミュニケーションの大切さを美容師目線からレクチャーします。

カットのやり方を教えてはいますが、最終的に”美容室好きの子どもを増やす”のが目的です。

前髪をカットする女の子

講演活動(スマイルカット啓発のため 全国にて講演)

発達障がいを抱える子ども達やその保護者への理解と、カットするためのプロセスを広めるため、大学や美容専門学校での講義・シンポジウム・子育て支援講座・美容業界や福祉関係者向けの講演会を全国で実施しています。

今までの「スマイルカット」の研究や実績から、

必要な方法・知識を美容師に提供することで、全国の多くの子ども達が理美容院で笑顔でカットする事ができます。

美容師を対象にした研修会や講演会を実施することで、この「スマイルカット」の輪を京都から広く全国へ広めていきたいと願い活動しています。

 

星髪戦士ピースマン


↑オリジナルヒーロー 大学と提携してヒーローショーを実施

美容室や散髪が大好きな子どもを増やすため、また障がいがありカットしづらい子どもたちが、一人で美容院の椅子に座りカットできるようサポートする活動を、ピースマンというヒーローを通じで伝えています。

大学と連携し、京都府や京都府自閉症協会等各種イベント・保育園・児童館などで、ヒーローショーを実施。

「スマイルカット」の啓発にとどまらず、

社会全体で障がい児を理解し支えていける、
偏見のないバリアフリー社会を目指していきたい。

障がい者の芸術を通した社会との関わりを考える活動を行う「市民活動エイブルアート近畿2013」にも参加し、児童福祉や障がい者福祉団体とも繋がり始めています。

ハピハピカット

貧困の子ども達への支援プロジェクトです。

日本の子どもたちの16.3%(2014厚労省発表)が貧困を抱えて生活をしています。

寂しそうな子どもの背中

このような家庭の多くが経済的な事情や保護者の事情で、理美容につながることが困難な状況です。

理美容につながらないことから、子どもや若者たちは見た目の印象で学校や仕事などの社会生活で不利益を被ることが多くなります。

またその身なりのために、一般的な人との付き合いや社会参加の機会も減って、時にはひきこもりなどにつながることがあります。

社会問題となっている子どもの貧困。

そらいろプロジェクト京都が架け橋となり、

経済や孤立などの事情を抱えている子どもや、若者が理美容につながる新たなモデル事業を行っています。

 

赤松さん自身、発達障害の子どもについて理解を深めたことで、なにか変化はありましたか?

 

「なぜいやがるのか?」
「なぜ切れないのか?」の理由を、

客観的に判断できるようになりました。

一人一人の歩幅に合わせ、練習をつんでいくことで、達成することができる。

子ども達が持っている力に、
感動をたくさん経験させてもらえました。

子どもはもちろん、

大人も含めてコミュニケーションの基本に立ち返り、
人の気持ちをより考えられるようになりました。

小さい子どものカットは今まで泣かれることが多かったが、

子どもの心理を勉強して、今ではほとんど泣かれることはなくなりました。

ヘアカットが苦手な原因は?

 

感覚過敏で髪や首を触られるのをいやがったり、

大きな(ドライヤーやバリカン)が怖かったり、

見知らぬ場所に入ることが怖かったり(お店や人)、

次に何をされるのか見通しが持てず不安になったり・・・といった原因がみられます。

また、無理矢理押さえつけてのカットなどを繰り返すことによるトラウマも推測されます。

ドライヤー

家で親ができる事前準備

 

事前に自宅で、こんな準備をしておいてもらえるといいですね。

  • どんなお店でどんなスタッフの人に会うのか、お店の外観やスタッフの写真をなるべく見せておく
  • どんなことをするのか?イメージを伝えておく
  • がんばったら、帰りにお菓子を買おう!公園で遊ぼう!といった楽しみ(好きなこと・好子)を約束しておく
  • 決して「切らなくていいから、行くだけ!」といった嘘はつかない

 

例えその日に思うようにカットができなくてもがっかりするのではなく、

『反対にがんばれたことを見つけて
いっぱい褒めるようにしてください。』

と、

事前に保護者さんには伝えています。

自宅で親子で楽しくカットできるコツ、あると便利なグッズ

 

工作用のはさみで髪を切ると、毛をひっかけてしまい痛く感じることがあります。(市販されている美容ハサミも同様です)。あわてず、ゆっくりはさみをいれてください。

DVDを見せながらなど、子どもが楽しめる環境をつくり、無理強いしないこと。

絵本等を使って、『チョキチョキはたのしいよ!』というイメージ作りをしてほしい。(そらいろプロジェクトでも絵本を製作しました)

 

事前に美容師さんに伝えておいたほうがいいこと

 

  • あらかじめ、苦手なことを伝えておく
    (急に触られるとびっくりする。ドライヤーの音が苦手。次にすることを、説明してほしい。長い時間じっとしているのがしんどいなど。)
  • DVD等見られるお店なら、お気に入りのものを持参する

 

スマイルカット加盟店になるには?

 

そらいろプロジェクト京都主催の講習会を受講して頂き、その後登録を行っています。
加盟店へは継続的にフォローを行い、加盟店間でのネットワーク作りも検討・構築中です。

スマイルカットについての詳細はこちらから

赤松さんがこれからやってみたいことはなんですか?

 

どんな子でも当たり前に、どこのサロンでも受け入れてもらえるように、全国への啓発活動を続けていきたい。

理美容師の国家試験用の教科書へ「発達障害」への項目を追加してもらい、未来の理美容師が知識を持っている状態にしたい、と思っています。現在取組中です。

ママたちへのメッセージ

 

髪を切ることは気持ちのいいことです。

それを当たり前にみんなが感じられるように、この活動を広めていきたいです。

保護者の方は、色々な場面で遠慮してしまう現実があると思います。

せめて僕たち美容師は、

理美容のプロとして、
どんな子も笑顔で受け入れ、寄り添っていける存在になりたいと思っています。

どの業種でもそれが広がれば、誰もが笑顔になれる、そんな素敵な社会になることを願い、活動を続けていきたいです。