【宮前区アインシュタイン放課後】佐藤 典雅さん「ゴールは就業。そのための子ども時代」

(株)アイム 代表取締役 佐藤 典雅さん

川崎市宮前区にて、放課後等デイサービス アインシュタイン放課後/ニュートン放課後を運営。
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『僕は福祉とか自閉症児をなんとかしようとか、その辺は興味ないんだよね。ただ自分の子どもの将来のためにやってるの。でも結果的に、それが同じ境遇の子どもたちのためになれば、いいよね』

今は小~中学生のサービスだけど最終目標は、”自閉症の人たちが収入を得られる仕事に就く”ためのビジネス。

そんなことを熱く語ってれた佐藤さん。どんなお話を聞かせてくれるのでしょうか・・・

『放課後等デイサービス』について

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2年前にできた制度なので、まだご存じない親御さんも多いと思います。
子どもを預けてお母さんの時間を作ることを目的としているので、内容に関してはペーパー上の規制以外には、特にありません。
ただ預かるところから療育を取り入れたり、運動系etc・・
そのデイサービスを作った人の背景で、テイストは違ってきます。

放課後等デイサービスを始めたきっかけ

僕には中学生で、中度の自閉症の息子がいます。
小学生向けのデイサービスが多い中、行き場がなくて彼に合ったデイサービスを作ろうと思って作ったのが、ここです。

息子が3歳の時に自閉症とわかり、アメリカに行き9年間みっちり指導を受けてきました。
日本に戻ってきて、最初はアメリカの療育をそのまま持ってきたデイサービスをやろうと思ったんです。
しかし、さんざん療育をやってきたうちの子が、全く何もやらなかった他のお子さんと結果が変わらなかった。

だから僕は、
「子どもの時何するかよりも、大人になって何するか」のほうが重要だと思っている。
「彼らがどうやって食べていくか」しか考えていません。

そうなると、今のデイサービスを基準に彼らに合った”高校”を作り、彼らに合った”就労支援”を作る。
それがうちのゴールなんです。

『出口まで、どうやってレールを引くか』なんです。

高機能の子たちは、がんばれば普通級に入れるかもしれないし、

高校も行けるし就職もできるかもしれない。

もっと重度の子は、就職を前提とした養護学校を出て就労も可能。
でも、うちに来ている子たちはその真ん中の中度。その真ん中の子達が、行くところがないんです。

教室のこだわり

 

多分、僕もアメリカ行っていろんな自閉症のレポートを見たが、
「これをやったから自閉症が治った」というレポートはないはず。

でも緩和された、マシになった、ならある。

自閉症の難しいのは個人個人全く違うので、比較が難しい。
おしなべてこれが効果があったとするのは、非常に難しいはず。

だから、大事なのは『個人個人に合った適正な環境をどうやって用意してあげるか』

その中でうちのデイサービスは、その『環境』を重視している。

いろいろ見てきた結果、人にとって一番何が一番モチベーションに影響するかと言ったら、その『場所』なんです。

 

この教室のインテリアを決めた時、

まず「大人が長くこの空間に居たいかどうか」を基準にしました。
大人がいたければ、子どももいたくなる。

あとは『人』
うちのスタッフの採用基準は、子どもが気に入るかどうか。

よく親御さんで、
「同じ年ぐらいの子と遊ばせたい」と言われるが、
自閉症の子たちは、遊びたがっているかというと、そうとも限らない。

同じ子どもより、「彼らが憧れる大人といる」ということがすごく重要なんです。

そして僕の目指すところは、「たくましい感性」をどう育てるか。

だからうちのテーブルには子供向けのテーブルはない。
全部大人向けのサイズにしています。

自閉症に関わりながら療育に実効性を求めず、違う視点から子どもたちをみているという点では、ある意味異端児なのかな、と思います。

でも教室の運営者として、自閉症の親として、それが現実的であろうと思っている。

自閉症の能力

知能指数が高い低いじゃなくて、頭の回路が我々の概念と違うところにある。

ここが低知能と自閉症の一番の違い。

いわゆる低知能と言われる子ってのはスピードが遅い。
だから一般の大人の常識で「こういう風に考えるよね、普通」というところは、
スピードが遅いだけなので、時間をかければいずれ到達できる。

でも自閉症の子は、僕にしてみれば知能指数は測定不能だと思っている。

まず質問しても答えない。
興味がないからね。
だから結果がわからない。

この子たちは全く違う視点で物事を見ているので、僕たちの常識の方法で測定しようとしても、無理なんです。

そうなったときに、彼らの特性を変えることはできない。

じゃあどうすればいいかというと、環境を彼らに近づけた方が早いというのが、
僕の結論。

一番の問題は、この”頭の良さ”が社会の実利と結びつかないということ。

なので今僕が取り組んでいるのは、

就労支援を通じで、どうやって彼らの能力を実利に結びつけるかというパズル。
いわゆるプロデュース業です。

ITを取り入れる

 

僕自身がYahooにいたこともあり、この教室ではITにチカラを入れています。
これから様々な手段でITが生活の中に入ってくるでしょう。
うちはパソコンもipadも1人1台あるように揃えている。

でも親御さんの中には、『パソコン使うと自閉傾向が強くなる』という方もいます。

ipad触って自閉症傾向が強くなるのではなく、
自閉症だからipadが得意なだけなんです。

最初はYoutubeしか見てないような子でも、

3年間、5年間やってたら飽きます。

絶対、違うことを始める。

その時に、Youtubeを使っていた下地があるかないかで違ってきます。

だから子供が集中しているときには、邪魔しない。

でも無理矢理やらせるものでも、ない。

チャンスを同じように与える

うちのスタッフに言っているのは、
その子がおやつを食べたくない、というときには無理強いするなと。
「アインシュタインが何かやっている時、邪魔するんですか?」と(笑)

逆にやる気がないときに、あれやれこれやれといっても、
子どもからしたら”強制”でしかない。

 

だからうちは、できることはいろいろ揃えて置くけど、
みんながテーブルにつかなくてもいい。

日本人は”結果平等”
おやつをあげるといったら、
みんな15時に同じものをあげないと気が済まない。

 

僕は”機会平等”
何時でもいいから、おやつを好きな時に同じ回数だけ食べられる、
アクセスできるチャンスがある、という”機会”を与えることが重要。

なので、結果的にみんな違うことするかもしれないけど、”きっかけ”を同じように与えていくこと。

それにどのように反応するかは、個人次第です。

みんなが同じように同じことをするっていうのは、間違ってると思う。

特に自閉症の子っていうのは、普通の常識から外れて違った世界で生きているから、
大人の”これがいいでしょ”という常識は通用しない。

皆さんに一言

子どもが小さいときは、未来の姿がわからないから不安になるのは当然です。
僕だって子どもが他動的な3歳の時、今の落ち着いた中学生の息子の姿なんて想像もつかなかった。

でも心配してもしなくても、結果はそんなに大きく変わらない

一番重要なのは、お母さん自身が楽しむこと。

お母さんが人生を謳歌してないと、
子どもが楽しもうだなんて思わない。

もっというと、

お母さんが美しい女性であることが、明るい家族の秘訣です。
お母さんがボロボロだと、子どもも旦那も荒みます。

後は夫婦で協力すること。

そうしないと子どもに間接的にプレッシャーがいってしまう。

もし自閉症の家族にアドバイスするなら、

ユーモアの感覚を持てるか持てないか。
そこだと思う。

子育ては10年、20年・・と長いスパンである。
今からそんなに思い悩んでいては、燃え尽きてしまう。

親が人生を楽しんでいることが、一番重要。
子どもは自分の親を見て育つので、
親がいつも悩んでいる姿を見ていたら、子どももそういう性格になってしまう。

だから僕が自分の子どもにできるのは、

僕が自分が楽しいと思う人生を生きて、
そこに自分の子どもを、一緒に相乗りさせてあげること。

だから僕は子どもを外に連れ出して、一緒に遊びます。

うちの子も、子ども同士といるよりは、
僕の友達の大人といる方が嬉しい。

子どもが「楽しい!」と思う環境を作ってあげること。

ただ、すべての家庭でそれをすることは難しので、うちの教室にいるときは、それをしてあげたいと思っています。

 

編集部から

佐藤さんの手がける事業には、ひたすら『我が子のために』という、ブレない理念があります。
彼のような方が創り出すものは、本当の意味で当事者のためになると感じました。

数々の新規事業を手掛けてきた方だけに、
これから作る高校や就労支援は、期待できそうです。
就労支援に関しても、安定した収入を目指すためには『売れる』ものでないといけない。

現在の福祉事業に、新たに”センス”という一石を投じることになりそうです。

佐藤さんについてもっと知りたい方は、
こちらのブログをご覧ください。おもしろいですよ。
http://blog.livedoor.jp/norism_blog/

 

インタビューアー

伊藤真穂
伊藤真穂