【明蓬館高等学校】徹底した環境整備と強みを見つける個別指導計画

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

東京品川・御殿山にある、内閣府認定特区高等学校(全国広域通信制)明蓬館高等学校。
発達の特性がある生徒たちのためのスペシャルニーズ・エデュケーションセンターとなっています。(通称:SNEC すねっく)
今回、お話を伺ったのは校長を務める、日野公三先生。

 

中学時代、不登校や引きこもりも経験した生徒たちが、スネックと呼び、親しむ高校。
生徒たちの過去と今を取材してきました。

 

明蓬館高校

*心理検査にこだわり、子どもが自分自身を好きになれる方法を考える高校

 

SNEC(すねっく)の一番の特徴は?

SNECの1番の特徴は、ここで、この場所で心理検査をすることができる ということです。
これは、我々の長年の悲願でした。
2000年に東京インターハイスクール(※米国通信制高校の分校)ができ、

2004年に アットマーク国際高校(※通信制高校)ができ、

2009年に 明蓬館高校ができました。

 

2007、2008年頃から”不登校の陰に発達障害あり”
そう 業界で聞かれるようになり、時同じくして 途端に増えてきたように思います。

 

わたし自身も、合点が行くというか、あの子もこの子も…と、生徒たちの顔が浮かんできたのを覚えています。

 

2008年に東田直樹くんが、アットマーク国際高校に門を叩いて入学してくれたのが、明蓬館高校を作る決定打になったと感じています。

 

当時、アットマーク国際高校では、特別支援に踏み込んだ学校運営をしていませんでしたが、彼が飛び込んでくれたおかげで、首都圏の学校ニーズや、これからのことを考えると

 

『特別支援に特化した通信制の高校が必要なんじゃないか?』

 

そう感じて明蓬館高校を作ることにしたのです。(翌年完成)

明蓬館高校日野先生

 

心理検査の壁

実は、2004年当時から、アットマーク国際高校にも、発達が気になる生徒がいました。
しかし、生徒と親御さんに検査を勧めたが、なかなか受けてもらえません。

 

検査の壁を感じました。

 

検査を受けることによって 障害の有無やIQを測られるなどの偏った考えがあり、足を運んでもらえないのです。

 

また、検査を前向きに考えたとしても、予約をとれるのが3ヶ月先・・・公的機関もしばらく待ちが当たり前。

本人とお母さんがOKでも、お父さんが反対・・・

 

だったら、学校の中にそういう機能を持ち、その機を逃さずに即検査ができる環境にしよう!

SNECの原点は、ここにあります。

 

なぜ検査が必要なのか?

検査があって初めて、特性の総合理解が進むと考えています。
科学的にも理解が深まることによって、個別教育支援計画(IEP)が作れるようになるのです。

 

だから、心理検査を実施できるようにしたかったのです。

 

現在は、基本的には WISC Ⅳを受検済みの生徒には、KABC-Ⅱ を勧めている。

この検査は、まだあまり普及はしていませんが、学習・認知特性がわかります。
躓きの箇所や背景や原因が、わかるようになるのです。
一方で、強みが必ず見えてきます

これが、KABC-Ⅱ の特徴です。

 

例えば、こういう学習計画を立てればこの子は伸びる!
それが、分かる訳です。

 

個別教育支援計画にチカラを入れることは、手帳を取得するための理由にもなりますし、何より合理的配慮を得ることができるようになります。
手帳を取るか、取らないか、あるいは返上するか、など、大きな選択の時が高校時代なのです。
就職活動や進学にも、色んな配慮(試験時間の延長など)が行き届くようになるのです。

 

そのためには、高校年代で、この個別教育支援計画が どう立てられ、実施されて、どのような実績が上がったのか?

が、問われることになります。

 

介護をはじめ福祉の領域では、ケアマネジャーなどがあらかじめプランを立てます。立てる中で、様々な視点からの情報や視点が集まってきて、選択や吟味が行われます。
ところが、特別支援教育ではまだまだ、最初にプランありき、の状況にはなっていないと思います。

 

これらは、学習が中心にはなりますが、 対人関係や親子関係、色んな進路や就労など、色々な方面から作り上げています。

 

そのため、親御さんにもご協力いただき、足を運んでもらっています。
家の中での様子や、心配や悩みごとから、その先にある今後の願いまで、丹念にお聞きする。
これが、保護者との信頼関係作りにもなっているのです。

 

お子さんを中心において、学校と家庭が共同戦線をはる
それくらい大切なことだと、考えています。

 

SNECに入学してくる生徒は、中学時代に挫折を繰り返した生徒がほとんどです。
不登校や引きこもり、二次・三次障害や精神障害を起こしている生徒も少なくありません。

明蓬館高校

教室そのものが、自分にとって合わないものとインプットされている生徒が多く、過呼吸やパニック障害の症状がでたり、体調面にも影響がでる生徒もいますので、気をつけてあげないといけません。

 

中学への聞き取りも行いますが、中学の個別教育支援計画はカタチだけ。
十分に機能しているとは言えません。

 

中には熱心な先生もいますが、個人情報という名のもとに、腫れ物にさわるような扱いです。

 

SNECでは、教員、相談員(臨床心理士)、支援員(学童や指導塾、放課後等デイサービスなどの実務が3年以上ある方)がいます。

 

三位一体のチームで、色んな視点から意見を聞き、分析や仮説を立て、実践することができています。

 

中には、教師の理解を得られずに、知的障害と言われてきた生徒もいました。
その生徒も、SNECに来て、過去の辛かったことを話すことができたり、少しずつ自分を表現できるようになってきています。

 

SNECの集団参加とは

無理な集団参加は、させません。
生徒たちは、すでに”集団ありき”という考えや”校則”で、さんざん嫌な思いを経験していますから。

 

ABA(応用行動分析)で分析し、ケース会議で検討。
”苦手”に取り組ませすぎないように配慮しています。

 

1,2年の頃は環境整備の連続です。
2年の後半から、少しずつタフな環境や、ストレスを加えて様子みていきます。

 

例えば、
月に一度のエクササイズや、調理実習、誕生会や、3ヶ月に一度の遠足などから参加を促していきます。
人数も、先生を入れて3〜4人。
小集団からの参加を徹底しています。

 

”この生徒にとって、どのような集団参加が好ましいか?”
という仮説を立て、具体例をあげ、目的をもった集団参加を計画化していきます。

 

生徒に合わせた学ぶ環境

インターネットを使用した授業では、1人1台パソコンを使用します。

パソコン

20〜30分という、1番集中力が続く時間を考慮し、数百本のオリジナルの授業を提供しています。
中学まで”勉強”という時間を奪われた生徒たちは、

 

ゆっくりと落ち着いて勉強できる時間や空間を欲しがっています。

 

また、

中学時代に色んな情報が飛び交い、
先生によってルールが違うことに混乱し、

 

『教室は地獄だった』
『拷問部屋のようだった』

 

と語る生徒や、

 

小学校時代から生徒が5人以上いると、家に帰って耳鳴りを起こしていた生徒もいます。
その生徒は、みんながそうだと思っていて”努力ができない自分はダメなんだ”と思っていたとのこと。

 

誰にも、言えなかった。
お母さんにも、言えなかった。

男の子

 

ディスレクシアのその生徒は、SNECに来て、ぽつりぽつりと話せるようになりました。

 

徹底した環境整備

 

SNECでは、感覚過敏の生徒にも配慮し、環境整備も徹底しています。

 

静かに勉強する場所という、場所規定を設け、掲示物は貼らず、壁も白いままに。
刺激をなるべく与えない環境を保っています。

明蓬館高校

 

高校は、人生の中間の折り返し地点。
自らがヘルプサインを出し、リクエストスキル(適切に人を選び、頼みごとのできるスキル)を身につけてほしい。

SNECは、安心でき、集中でき、自己肯定感・共生感を感じられる場所です。

 

単位認定の方法は?

高校なので、
・レポート
・スクーリング 福岡本校に3泊4日
・(テストだけでなく)学習成果物
これらを通して、単位認定をしています。

 

特にチカラをいれている成果物は、生徒と話し合い、調べ学習と課題レポート、作品、コンテストへの応募、検定試験や模擬試験の受験などに挑戦し、その評価をしています。
それにより、没頭できる対象、集中すると途中でやめようとしない生徒が現れます。家業や親の影響を実感し、同じ仕事に就きたいと思う生徒も出てきますね。

 

既に アメリカの特別支援教育では、成果物(ポートフォリオ)評価は一般的です。
テストは、日本だけなんですよね。
SNECが出来る前まで遡ると、これらの学習成果物評価が功を奏して、発達の課題を持ちながらも、さおり織りのアーティストになった生徒や、市松人形の絵師になった生徒、自衛官、公務員、プログラマーになった生徒がいます。

 

本当に多士済々です。

 

SNEC卒業生の中には、四年生大学のデザイン学部に進学した生徒、芸術系の通信制大学、ビジネス系の通信制大学に進学した生徒がいます。
生徒は、好きなものは手抜きをしません。
好きなものをやめずに、一筋に突き詰めよう!

 

ママたちへのメッセージ

子どもたちの優位性をみてほしいな、と思っています。
マイナスだけじゃなくて、そこに必ずプラスが隠れています。

 

問題行動は、家庭じゃなく 一歩外に出たところで出やすいですね。
先生にお伝えして、問題行動を規制するのではなく、起きにくくなるといいですよね。

 

問題行動だけに焦点を当てれば済むことなのに、せっかくの良いところまで消えてしまう。

 

先生たちが、生徒たちの躓きを感じ取れるか?
叱る対象とならないためにも、事前の情報提供が必要だと感じています。

 

親が、1番よく見ています。
親が、1番の弁護人です。

 

子どもの良いところを、たくさん知っているはずなので、そこを伝えて行きましょう。
また、色んなことを話せる先生を、学校の中で見つけて行きましょう。

 

それから、

 

自分自身をいたわること、忘れないでください。
内閣府特定特区高等学校(全国広域通信制)
明蓬館高等学校(SNEC)

 

編集後記

日野先生のお話を伺いながら、生徒たちが自分自身を”もう一度好きになれるように”配慮されていると感じました。

中学、または小学生の頃から重ねられてきた生徒さんたちの挫折感は、たくさんのエピソードに詰められていて、インタビューしながら、胸がしめつけられる想いでした。

それは、きっと親御さんも一緒ですよね。

人生には、たくさんの選択肢がある。
日野先生の想いが、必要な方に届きますように。

 

インタビューアー

浜田悦子先生

<おうち療育アドバイザー浜田悦子>
『元発達支援センター指導員』で『自閉症スペクトラムの息子の母』という2つの経験を生かし、同じ悩みを持つお母様方に、家庭でできる療育アドバイスや、カウンセリングを行っている。
日常生活や社会性の悩みへの対処法を、具体的に指導。
HP  Blog

  • このエントリーをはてなブックマークに追加